Report 5

IoT / AI ×ビジネス

「人工知能 + 感情計算。我々は冷たいロボットにIQとEQを与えたい。」

(竹間智能科技有限公司 CEO 簡 仁賢氏)

「プロ棋士の直感は、実はパターンを認識するところです。パターン認識はまさにディープラーニングだ。」

(ドワンゴ人工知能研究所所長 山川 宏氏)

「ディープラーニングの技術を応用して、将来的に工場で働くロボットもプログラミングなしで自律に学習できるようにしたい」

(株式会社センスタイムジャパン 取締役 勞 世竑氏)

「AIは教師の仕事を奪うのではないかと聞かれますが、教師の事務作業の負荷を軽減し、先生にしかできない、生徒と向き合う時間に使ってもらいたい。」

(株式会社サインウェーブ 代表取締役社長 赤池雅光氏)

インテリジェント・スライフスタイルというプラットフォームの上で、テクノロジー、ソリューション、ユーザー、商品のWin-Win関係を築いていきたいと思う。

(Shao Hai Hui パートナー創業者 劉 斥氏)

 

◆ テクノロジーは、社会や人間の役に立つために進化する。

AI技術の新しいアプローチについて、中国と日本をそれぞれ代表する簡 仁賢氏(竹間智能科技有限公司 CEO)と山川 宏氏(ドワンゴ人工知能研究所所長)がパネルディスカッションを行った。モディレータは中国語が堪能な田中章雄氏(インフィニティ・ベンチャーズLLP代表)だった。

パネルディスカッション  左:田中 章雄氏 中:簡 仁賢氏 右:山川 宏氏
パネルディスカッション
左:田中 章雄氏 中:簡 仁賢氏 右:山川 宏氏

2015年に創業した簡氏は社名(英文)を「Emotibot」にした。そこに込められた思いは、「Emotional Robotを作る」、つまり、「人工知能+感情計算」でロボットをパーソナライズするということだ。

「Hondaは1970、80年代からロボットを作っていた。1990年代半ば、インターネットが普及し始めたが、なぜロボットが流行らなかったか?ロボットが人との距離感があって信頼感が築けられなかったからだと思う。冷たい機械だと思われていた。我々は冷たいロボットにIQとEQを与えたい。」と簡氏が語る。「オープンドメインで人とロボットの会話はまだ難しいが、特定のドメインを対象にした開発はうまく行っている。」一人に対して朝から夜までビジネスに関係するコンテキストや特定の領域を追跡し、AIはディープラーニングによって、書いたものが読める「言葉の意味に対する理解」から、「文脈の意図への理解」、そして「感情識別」ができるようになった。

一方、山川氏は汎用人工知能の創造を目指して2013年12月に全脳アーキテクチャー協会を発足させた。脳全体のアーキテクチャーに学び人間のような汎用人工知能を作る目的だ。そのアプローチとして、脳の各器官を機械学習モジュールとして開発し、それらを統合した認知アーキテクチャーを構築するだという。

難しそうに聞こえるが、例えば将棋においてプロとアマチュアの違いは、パッと選んだ手がどれくらい正解しているかという確率だと言える。その直感の部分は、実はパターンを認識し判断する瞬間だ。そのパターン認識の過程をモジュール化し機械に学習させ、再びそれらを統合することによって、AIの知的能力は次第に人間レベルに近づき追い越して行くだろう。

 

田中氏が質問する。「これから2、3年後の2020年頃に、AIの技術進歩によって世の中はどのような新しいサービスが出てくるか?」

山川氏は「ちょうど東京オリンピックの頃なので、海外からのお客様とリアルタイムに近いタイミングにコミュニケーションができるAIが期待できる」と語った。

「情報量・業務量の増大と複雑化につれて、20%のカスタマリレーションシップはロボットに取って代わるだろう。」と簡氏が予測した。

 

◆ ディープラーニングの進化で画像認識・顔認証技術を事業化

(株)センスタイムジャパン (商湯科技) 代表取締役 勞 世竑氏
(株)センスタイムジャパン
代表取締役 勞 世竑

ディープランニングの進化によって従来では難しいとされる画像認識の性能が飛躍的に向上した。画像認識技術は、監視セキュリティ、金融などさまざまな分野において応用されるようになってきた。特に顔認識技術や、人体や車の検出技術の性能がビッグデータで学習した結果、性能が飛躍的に向上し、さまざまな実環境で応用可能になってきた。更に、自動運転やロボットの分野への応用も期待されている。

中国における最大規模のディープラーニングの専業会社であるセンスタイムグループの日本法人 勞 世竑取締役は、同グループのディープラーニング技術の事業化について例を挙げて紹介した。

画像認識の一番難しい課題は自動運転だと言われている。車を検出するトラッキング技術において、センスタイムのロバスト性(環境の変化といった外乱の影響によって変化することを阻止する内的な仕組み、または性質)が良く、天候が悪かったり照明環境が悪かったりする環境においても認識が可能だという。

また、顔認証においても、顔の特徴点の認識が優れており、従来難しいと思われている経年変化や異なる照明環境における顔認証もできるようになった。映像分析で人をトラッキングすることで、誰なのか、幾つなのか、さらに動きや対応、表情から関係性への認識も可能だ。

こうした技術を利活用して現在400ある企業に対してAI技術を提供している。

主な分野としてセキュリティ監視システムや金融機関における身分証明サービス、自動運転など。スノーSNOWのアプリにある顔認識技術も使われている。また、空港や高速鉄道、社会保険など個人認証、身分証明の検査自動化に役立っている。

同社グループの研究母体は香港中文大学である。従業員500人のうち、PhDは120人以上在籍している。画像認識のオリンピックと言われている「イメージネット」コンペティションにおいて、三項目で優勝している。売り上げに関してもスタートアップ会社の中でトップを誇り、香港、北京、深セン、東京を拠点に事業を展開している。

 

◆ AI技術 x 音声技術で語学教育にイノベーションを

(株)ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEO 守安 功氏
(株)ディー・エヌ・エー
代表取締役社長兼CEO 守安 功

株式会社サインウェーブ 代表取締役社長 赤池雅光氏は、AI/音声技術を使った英語教育ソリューションについて紹介した。

Infinity Ventures Summit 2009 Fallにおいて音声認識で優勝したメンバーが中心となって、音の波形を表すサイン波を社名に設立されたサインウェーブ社。2016年5月に、中国のiFLYNEK(アイフライテック)社と資本業務提携し、日本、特に教育分野における事業展開を加速している。

iFLYNEK社は「MIT-Technology Review」2017年度ランキングでアルファベット社に続き世界6位にランクインされており、テンセント社(同8位)を抜いてアジアのトップとなっている。音声認識の世界的ベンチマーク1位と評価された。中国科学技術大学初のベンチャー企業で2008年に深セン株式市場に上場し、社員数6000名で平均年齢はなんと26歳という若さ。中国国内において7割のスマホにその音声技術が搭載されている。事業分野は、音声合成・音声認識からスタートし現在はビッグデータを活用してAI(人工知能)にシフト。

サインウェーブとiFLYNEKと組むことによってどんなことができるか?その背景となる日本の英語教育市場の状況と課題について見てみましょう。2030年には3.2人に1人が65歳の超高齢化社会になり、学生数も減っていくが、語学市場は年間1%以上増えていて、規模が増加している成長マーケットだ。

  • 2020年から大学入試にスピーキングが追加
  • 2018年より小学校において英語が必修化
  • 観光客の増加によるインバウンドへの対応
  • オリンピックの開催に向けた語学ニーズの増加

特に上の二つの項目に関して、サインウェーブ社はAI × 音声技術によって「問題×音声データ×採点」を機械学習させるシステムを開発し実用化を始めた。つまり、英語の問題文章に回答した発話データを判定員が採点し、それを大量に機械学習させると、次回からはAIが判定員のように判定基準を持って自動で採点できる。

「英語音声スピーキング評価システム」は、実はアイフライテック社は2007年から中国科学技術大学などで英語スピーキングの入試試験に採用された。「高水準の大学英語教師の判定レベル」に達していると評価されている。また、方言などの発音に影響を受けない多くの受験者に利用可能なデータシステムを構築した。また人よりもばらつきが少なく、誤差も少ないという判定結果が出されている。

これにより、先生の単純な事務作業の負荷を軽減し、効率化された時間を先生にしかできない、生徒と向き合う時間に使ってもらうことができる。

 

◆ 新生態、新物種、新体験の創出

Shaohaihui, パートナー創業者 劉 斥(Chi Liu)
Shaohaihui, パートナー創業者
劉 斥(Chi Liu)

少海汇の創業者 劉 斥氏は、インテリジェン・スライフスタイルのプラットフォームの構築について紹介した。テクノロジー(IoT、AI、ロボットなど)、アプリケーション(ソリューション)、ユーザーと家庭、インターフェイス(商品)という四つの企業分野がこのプラットフォームを通じてWin-Win関係を築く。

新生態とは、IoT技術を利用したスマートハウスを中心に、装飾から、交通、運動、健康管理などまで、それぞれの分野で各専門性の高い企業に参加してもらう。

新物種とは、業界や専門領域の壁を超えて融合することによって、または伝統産業をAI化することによって、今までになかったサービスを生み出す。

新体験とは、優れた商品を集め、ユーザーに体験してもらう空間を設け、キッチンで料理し、レストランでお食事し、モデルルームで宿泊も可能。また、製造ラインも設置しており、お客様が選定した商品をその場で作り、持ち帰ることも可能。

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