Report 2

IoT分野における日中両国のグローバルイノベーション

「才能のある人は、その才能がバックアップされないと発揮できない。若い人は日本にこだわらず、国際のなかで活躍した方がいい。」

(慶応大学特別招聘教授 夏野 剛氏)

スペシャル対談にご登壇いただいたのは、慶応大学特別招聘教授 夏野 剛氏とGWC(長城会)会長 文 厨氏です。日本と中国の現状について忌憚のない意見を交わし、未来への提言を行いました。


◆ 将来の成長性に影響するVC(ベンチャーキャピタル)投資

スペシャル対談:左:文厨氏、右:夏野剛氏
左:文厨氏、右:夏野剛氏

2015年の中国GDPは日本の2.5倍程度だが、VC投資規模は日本の10倍以上。日本のVC投資は活発ではない。これに対して、夏野氏は日本の大企業がリスクマネージメントに対する保守的な考え方を指摘した。

「商品に結びつく、いわゆるインクリメンタルイノベーション(改良による技術進歩)が大きな割合に占めていて、ディスラプティブイノベーション(破壊的技術変革)に向いていないように感じます。例えば、今の車をちょっとだけ燃費をよくする研究開発に対して多く投資しますが、その成果が先で見えない10年後、20年後の製品開発のための投資をあまり行われていない」。

投資額については、「日本の去年のVC投資額は3000億円で、中国は3兆円で、アメリカは6兆円です。この規模の違いは非常に将来の日本の成長性に影響を与えていることは紛れもない事実です。正直、日本のベンチャーキャピタルの方々、あるいはベンチャーキャピタルにお金を投じている出資者の方々、つまり大企業ですが、大反省していただきたい。何を目指してベンチャー投資しているか、考え直さないといけない。」と将来性への懸念を示した。

また、投入から収益までのマネタイズの能力について、中国は2016年から2018年のモバイル市場予測では158% – 183%と高く維持する模様。
アメリカや中国企業はどんどん新しいテクノロジーを市場に出して、市場からのポジティブフィードバックによってどんどんブラッシュアップしていっている。日本も頑張らないと。」と夏野氏がジレンマを感じている。


◆ 日本企業がグローバルマーケットで勝負する条件

2008年からこの10年間でモバイルインターネット市場は一気にグローバルになった。「グローバルになったときに、日本のプレイヤーはローカルマーケットにフォーカスして開発していたものだから、グローバルトレンドに遅れてしまいました。中国もローカルマーケットしか見ないでサービスを提供していたが、ローカルとは言え、世界の20%の市場を占めているから、それで成立してしまいます。アメリカのシリコンバレーの企業は、英語という言語を使って自国向けにサービスを作っていても、自然にグローバルに使われるという大きなアドバンテージがあって成長していました。

ということで、日本のサービスが世界に出て行く最小限の条件は、マネージメント、運営体制、ビジネスモデル、使用言語、これらを最初から盛り込んでいないと、スタート時点でローカルになってしまいます。

「ただし、ローカルマーケット向けのサービスを作るというのは、今までにないサービスを作りやすい環境にあるので、イノベーションが生まれやすいのも事実です。だからアメリカ企業や中国企業も日本から出てくるサービスを非常に関心があり、日本のマーケットはいまだに注目されていることだと思います。

一方、人材育成に関して、AIなどの分野に関して若い技術者が多い。「若い人は、日本の大企業よりも、中国の勢いのある企業で予算をたくさんつけてくれるところで研究したほうが、成果が出やすい。これからの10年は日本の人材は草刈り場になる可能性が高い。」と率直に見解を述べた。


◆ 中国式イノベーションと日本式イノベーション

GWC(長城会) CEO 郝 義氏
GWC(長城会) CEO
郝 義氏

閉会挨拶では、GWC社長はファナック株式会社の稲葉会長の言葉を引用し「日本企業はマラソンを走っているのに対して、中国企業は100メートル短距離走だ」と日本式イノベーションと中国式イノベーションの違いを言及した。

中国企業のスピード感はグローバル成長において有利になっている。日本企業の持久力、ビジョン力が世界から参考とされている。この二つの要素を融合させることが大事である。中国企業は短距離走だけではなく、いかに遠く走るかを考えなければいけない。日本企業も短距離走のようなチャレンジを輝かせなければいけません。

「G-Summitというプラットフォームを通してお互いに答えを見つけられることを願っています。」と郝義氏が熱意を表明した。

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